当院の臨床例

PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)

当院では椎間板ヘルニアに対してPLDDという身体への負担が少ない手術方法を行なっています。

PLDDとはPercutaneous Laser Disc Decompressionの略で、日本語に訳すと「経皮的レーザー椎間板減圧術」といいます。

椎間板ヘルニアは、脊椎の間にある椎間板という部分が押し出され、はみ出すことにより神経を圧迫することにより、痛みや麻痺を引き起こす病気です。PLDDはその椎間板の中に針を刺しレーザーを照射することにより、椎間板の中に空洞ができます。その空洞をなくすために椎間板が萎縮することにより、出っ張っていた部分が解消されるのがPLDD治療の仕組みです。

従来、椎間板ヘルニアの手術では、皮膚を切開し、骨を削る負担の大きい手術でしたが、PLDDは皮膚も切らず針を刺してレーザー照射するのみのため、とても負担が少なく手術時間もとても短くなっています。

PLDDのメリット
・手術の侵襲性がとても低い
・手術時間が短い
・入院日数が短い
・手術後の回復が早い

PLDDのデメリット
・適応になる状態が限られている

 

<症例>
ラブラドール 14歳 雄
1年前からふらつきがあり薬を飲んでいたが、最近になり悪化

CT検査にてL7−S1椎間板突出による脊髄神経の圧迫(赤丸部分)を確認しました。

ペクCT画像

突出しているL7−S1椎間板に針(赤矢印)を刺入、PLDDを実施しました。

ペクPLDD

 

処置翌日に退院

3日後より改善がみられ状態安定。服用していた鎮痛剤も休薬することができました。

 

ICGを用いたレーザー治療

当院では腫瘍の治療にICG(インドシアニングリーン)という色素を用いたレーザー治療を行なっています。

 

ICGは緑色した色素でレーザー光を吸収し発熱する効果があります(温熱効果)。そこでICGを腫瘍表面に塗布したり、注入した後、レーザー光を当てることにより周囲組織の損傷を最小限にし腫瘍組織を凝固・蒸散することができます。

色素を付けてレーザーを当てるのみですので身体への負担が非常に少なく、高齢や持病があり手術で切除するには負担が大きい腫瘍の治療などに特に有効です。また、浸潤性の腫瘍に対する補助療法や、腫瘍等の病変に伴う症状の緩和にも役立ちます。

 

症例

MIX  12歳 雌

2週間前にできたしこりを主訴に来院

右の胸にできた腫瘤(しこり)。悪性腫瘍を疑ったためCT検査、手術による切除となりました。

CT検査にて腫瘤が肋骨の間に浸潤を確認。

通常であれば肋骨を含めた胸壁を切除する手術が必要になります。

しかし、その手術方法であると負担が非常に大きく、年齢も考慮しICGを併用した手術方法を選択しました。

皮膚を切開し、皮膚の下にある腫瘤を肋骨を温存しつつ可能な限り切除

肋骨の間に浸潤している部分にICGを塗布

レーザーを照射。腫瘍の浸潤を疑う部位を蒸散

負担の少ない手術であったため高齢であるにも関わらず手術翌日より一般状態もよく、早期に退院できました。

病理の検査結果では「脂肪肉腫」という悪性の腫瘍で、肋骨の間に浸潤しているため完全に切除できていませんでしたが、浸潤を疑う部位にICGを併用したことにより、その後も良好に経過しています。

 

肩関節脱臼

肩関節脱臼は、外傷性のものと先天性のものに分けられます。

外傷性のものはあらゆる年齢・品種で生じますが、猫での発症は稀です。

また、先天性のものは、通常トイ・プードル、シェットランド・シープドッグなどの小型犬に多く発生し、歩行の異常は若齢時に観察されます。

【症例】

トイ・プードル 6ヶ月齢 雌

右肩関節内方脱臼。

初回来院時は無麻酔下での非観血的整復と固定術を行いましたが、その後脱臼を繰り返したため全身麻酔下での観血的整復を実施しました。

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この症例では、上腕二頭筋腱をスクリューとワッシャーで固定し、上腕骨の脱臼を抑制する方法を取りました。

 

術後のレントゲンです。

 

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この症例は、術後1ヶ月ほどで前肢を地面につけるようになり、その後の経過も順調でした。

骨盤骨折

骨盤骨折の原因で一番多いのは交通事故です。

そして、膀胱や尿道破裂、ヘルニア、末梢神経神経損傷といった併発する損傷が多く生じるため、完全な身体検査が重要となります。

【症例】

柴犬 雄 1歳齢 交通事故による骨盤骨折

この症例ではプレートを使用して右腸骨の固定術を行いました。

術前のレントゲン写真です。

 

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術後のレントゲン写真です。

 

P1110818

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この症例は、術後2ヶ月ほど包帯による固定を行い、その後包帯を外しても歩様は良好でした。

後肢骨折

【症例】

紀州犬、8ヶ月齢、オス。

車の荷台から落下

診断:右後肢脛骨遠位端横骨折

(骨折が成長板に沿っておこると同時に骨幹端骨折を含む、Salter-HarrisⅡ型の骨折)
骨折時のレントゲン写真です。

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この症例は、ピンによる内固定とギプスによる外固定を行いました。
術後の写真です。

 

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この後順調に回復し、2ヶ月後に抜ピンを行いました。
歩行も問題ありません。

鼻腔内腫瘍

【症例】ラブラドールレトリーバー 13歳齢 雄

2〜3週間前から鼻出血が認められたため、来院されました.

◎レントゲン検査

さがれお DV

右側鼻腔内において不透過性の高い占拠性病変を認められました

 

◎ CT検査

CT coronal像

CT coronal像

MPR 像 saga reo 3

CT axial像

MPR 像 saga reo1

CT sagital像 鼻腔・前頭洞に病変が認められます

 

◎ 細径電子内視鏡を用いた検査

2014-05-16_1109_IMG0002

【右側(病変側)鼻腔内】  粘膜表面の不整が認められます

 

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【左側(非病変側)鼻腔内】 粘膜表面は平滑です

 

病変側の組織を内視鏡下にて、一部採材し病理組織学的検査を行いました。

 

◎病理組織学的検査結果

『未分化癌』・・・鼻腔上皮由来の悪性腫瘍

 

◎治療

止血剤およびCOX2選択阻害薬

 

 

 

当院の動脈管開存症の手術実績

動脈管開存症は、胎生期に重要な役割を果たしている動脈管(大動脈と肺動脈を結ぶ血管)が 生後においても閉鎖せず開存しているためにおこる疾患で、犬では最も多い先天性心疾(30%)です。

好発犬種としては、マルチーズ、ポメラニアン、ミニチュアダックスフンド、トイプードル、ヨークシャーテリアなどがあげられます。

生後動脈管が開存したままの状態では、圧の高 い大動脈から動脈管を経て圧の低い肺動脈に流入した血液が肺に流入するため肺の血流が増加し、その結果、左心系に流入する血液量が増加し(左心系の容量負荷)、 左心不全が発現します。動脈管の開存が大きい症例では早期に死亡する可能性が高くなります。動脈管開存症の治療に対しては、主に心臓外科(開胸)治療、カテーテ ル治療の2通りの治療法があります。 症例の年齢や大きさによって治療法を選択し、大動脈から肺動脈への短絡血流を止める目的の処置を行ないます。

今回は当院のPDAの心臓外科治療(開胸手術)の実績を報告致します。

 

  ※ Sは生存 dは死亡

 

 

診断には視診、触診、聴診、レントゲン検査、超音波検査、心血管造影検査等を行ないます。

聴診では特徴的な連続性の雑音を聴取でき、股動脈はまた脈が跳ねるような反跳脈(バウンディングパルス)が触知されます。

レントゲン検査では左房および左室の容量負荷による心拡大が認められ、肺循環の血流増大により肺野の血管陰影の増強が認められます。短絡血流が非常に多い場合、左心不全から肺水腫を呈することもあります。

さくらVD のコピー さくらLR のコピー

 

超音波検査では左心負荷所見が確認されます。右傍胸骨短軸像大動脈弁レベルでは主肺動脈に動脈管を介した短絡血流が認められ、連続波ドップラでは連続性波形が認められます。

ECHO LV

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 治療

開胸下の外科的治療方法の結紮術には、直接法、ジャクソン法、ヘモクリップ法などがります。

直接法は動脈管を露出させる必要があり、動脈管は肺動脈付着部下壁が危弱化していることが多く、この部位を損傷してしまうと大出血につながる危険性が高い方法のため、当院ではジャクソン法またはヘモクリップ法で動脈管の閉鎖を行なっています。

 

●ジャクソン法を行なった症例

PDA tatuyosi 結紮後

      

 

●ヘモクリップを使用した症例

IMG_0769IMG_0773

 

 

小笠原チョコラ結紮前   小笠原チョコラ

 

 

 

 

PDAは外科手術により根治できる先天性心疾患です。短絡血流量にもよりますが、早めに治療を行なわないと血管がもろくなり、手術のリスクが高くなります。

PDAは速やかに診断し、治療を行なうことが重要であると考えられます。

椎間板ヘルニア

脊椎と脊椎の間に存在する衝撃吸収装置である椎間板が、本来の位置から脱出し、椎間板の上を走る脊髄神経を圧迫することで、神経の障害を生じる疾患です。圧迫の度合いによって後ろ足が思うように動かなかったり、排尿、排便ができなくなります。

ミニチュアダックスフンド、ビーグル、ペキニーズなどで多くみられる病気です。

診断は神経学的検査、X線、脊髄造影検査、CT、MRI検査で行います。

 

【症例1】

ミニチュアダックスフンド、メス9歳。後ろ足が立たなくなったため、来院。

内科的治療に反応しなかったため、造影CT検査を実施。第4、第5腰椎の間に脊髄を圧迫する部位を確認しました。

椎間板ヘル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片側椎弓切除術にて圧迫していた椎間板物質を除去しました。

入院しながらリハビリを行い、術後1か月ほどで後ろ足を使いながら歩けるようになりました。

術後半年経過し、現在はほぼ正常に歩行しています。


手術直後


手術後1ヶ月

 

 

 

【症例2】

ミニチュアダックスフンド、オス12歳。2日前から起立困難。

内科治療に反応せず、CT検査を実施したところ、第12.13胸椎の間に脊髄を圧迫する部位が確認されました。

 

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片側椎弓切除術にて大量の椎間板物質を除去し圧迫をとりのぞきました。

 

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術後25日で感覚は良好に改善されていました。

 

 

 

会陰ヘルニア

本来であれば内臓をおおっているの肛門近くの筋肉が脆弱になり支えることができなくなってしまう。

そこにできた欠損孔に脂肪、消化管、膀胱、前立腺などが入り込んでしまう病気です。メスよりもオスの犬で多く、特に去勢をしていない犬で多く見られます。

排便、排尿が困難になることも少なくありません。

【症例】

シーズー13歳 オス 未去勢

この症例は他院で手術を実施しましたが間もなく再発し、当院で再手術を行なった症例です。

 

左右両側に会陰ヘルニアが確認されました。

いくつかの手術方法がありますが、今回は再手術ということもあり、

メッシュ(医療用のシート)を用いてヘルニア孔を整復しました。

この方法は恥骨前縁から両側にメッシュを通し、残存している筋肉を丁寧に

縫合します。2年経過良好です。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

潜在精巣(陰睾)

潜在精巣は,精巣の下降が不完全で陰嚢内に納まってない状態のことをいい,正常な精子を産生することができません.

片側性の場合,陰嚢内に納まっている精巣では,正常な精子の産生がみられますが,遺伝的要因が考えられているため,繁殖に供するべきではありません.

さらに,将来的に腫瘍化する可能性が高いことがわかっているため,早期に摘出する必要があります.

今回は,両側鼠径部における潜在精巣の摘出手術を行った1例を紹介します.

 

【症例】

犬 トイ・プードル 未去勢雄 6歳齢

両側鼠径部に潜在精巣が認められました。(図1  黒矢印).

 

 

 

 

 

▲図1

去勢手術を行いました.通常の切開創から両側の睾丸を摘出しました。

摘出された精巣は、形・大きさは対称的であったが,両側とも正常より萎縮していました(図2).

 

 

 

 

 

▲図2