当院の臨床例

会陰ヘルニア

本来であれば内臓をおおっているの肛門近くの筋肉が脆弱になり支えることができなくなってしまう。

そこにできた欠損孔に脂肪、消化管、膀胱、前立腺などが入り込んでしまう病気です。メスよりもオスの犬で多く、特に去勢をしていない犬で多く見られます。

排便、排尿が困難になることも少なくありません。

【症例】

シーズー13歳 オス 未去勢

この症例は他院で手術を実施しましたが間もなく再発し、当院で再手術を行なった症例です。

 

左右両側に会陰ヘルニアが確認されました。

いくつかの手術方法がありますが、今回は再手術ということもあり、

メッシュ(医療用のシート)を用いてヘルニア孔を整復しました。

この方法は恥骨前縁から両側にメッシュを通し、残存している筋肉を丁寧に

縫合します。2年経過良好です。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

潜在精巣(陰睾)

潜在精巣は,精巣の下降が不完全で陰嚢内に納まってない状態のことをいい,正常な精子を産生することができません.

片側性の場合,陰嚢内に納まっている精巣では,正常な精子の産生がみられますが,遺伝的要因が考えられているため,繁殖に供するべきではありません.

さらに,将来的に腫瘍化する可能性が高いことがわかっているため,早期に摘出する必要があります.

今回は,両側鼠径部における潜在精巣の摘出手術を行った1例を紹介します.

 

【症例】

犬 トイ・プードル 未去勢雄 6歳齢

両側鼠径部に潜在精巣が認められました。(図1  黒矢印).

 

 

 

 

 

▲図1

去勢手術を行いました.通常の切開創から両側の睾丸を摘出しました。

摘出された精巣は、形・大きさは対称的であったが,両側とも正常より萎縮していました(図2).

 

 

 

 

 

▲図2

尿道・膀胱結石

膀胱結石は、尿路結石症のなかでは一般的に見られるものです。発症すると、排尿困難や血尿などの症状が現れます。多くが細菌性の膀胱炎によって引き起こされます。

胱結石の治療は、結石の種類や大きさによって異なります。小さく溶かしやすいと考えられる結石であれば、処方食などによる内科療法を行います。溶けにくい種類の結石であったり、大きな結石である場合には、外科手術によって摘出します。

【症例】

犬 Mix 未去勢雄 9歳

一年ほど前より頻尿・血尿を繰り返し、前日より元気消失・嘔吐を主訴に来院。

腹部X線検査により、尿道・膀胱内に結石が認められました。

腹部仰臥位

腹部横臥位

 

 

 

 

 

 

 

結石が膀胱、尿道内に多量に認められたため、膀胱切開を実施し、尿道内の結石も膀胱に押し戻し、摘出しました。

膀胱および尿道内から摘出された結石

 

 

 

 

 

 

 

結石の摘出後の成分分析はストラバイト結石でした。

これから結石の再発が起こらないよう、処方食で維持をしていく必要があります。

これほどひどくなる前に病院に来てもらえたら・・・と思う症例でした・・・。

 

 

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は,避妊手術を行っていない雌犬に起こる,子宮に膿が貯留する病気です.

出産経験のない中〜高齢の雌犬に多く発生します.

第一選択治療は,卵巣子宮全摘出術です.

 

【症例】

犬 ミニチュアダックスフンド 未避妊雌 7歳齢

嘔吐,元気消失を主訴に来院.

診察時,外陰部から排膿が認められた.

腹部超音波検査および腹部レントゲン検査にて,子宮の液体貯留および子宮の拡張を確認.

  

 

卵巣子宮全摘出術を行った.

摘出された子宮には膿が貯留し拡張していた.

 

手術後,点滴、抗生剤の投与により

食欲および元気回復し,経過は良好である.