三尖弁閉鎖不全症
TR Tricuspid Regurgitation
心臓には血液の流れを一方通行にするための弁が4つ存在します。
このうちの1つ右心房と右心室の間に存在する三尖弁がうまく閉じなくなることにより逆流を起こしてしまう病気が三尖弁閉鎖不全症です。
ほとんどは後天性であり、僧帽弁閉鎖不全症や肺血管疾患を併発しています。また、フィラリア症では三尖弁閉鎖不全症がみられます。
ごく稀ですが先天性の三尖弁異形性により三尖弁の逆流が生じていることもあります。
症状
三尖弁閉鎖不全症は一般的に以下のような症状がみられます。
①呼吸困難:病気の進行により犬が息切れや苦しさを感じることがあります。
特に活動時や興奮時に症状が顕著に現れる場合があります。
②咳 三尖弁閉鎖不全症では肺に負担がかかり、肺血管が拡張し肺うっ血をきたすため咳を
誘発してしまいます
③ 元気消失:散歩や遊びが以前よりも短くなる、または嫌がるようになることがあります。
④胸水・腹水:病気が進行すると、胸水や腹水など体の内腔に液体貯留が認められることが
あります。
検査
聴診、レントゲン検査、超音波検査、心臓ホルモン検査、心電図検査を行い、
心臓の状態を把握します。
特に超音波検査はとても重要で、三尖弁の形態の変化や昨日の異常、逆流の程度やその他の心臓疾患の有無等を確認します。
-
一般身体検査/聴診
収縮期逆流性雑音が聴取されます。
-
レントゲン検査
仰向けのレントゲンです。
心臓の拡大が顕著です。
こちらが正常な心陰影です。
横向きのレントゲンです。
こちらも心臓の拡大が顕著です。
こちらが正常な心陰影です。
-
超音波検査
右心室から右心房へと向かう緑色のカラーが確認できます。
このカラーは三尖弁がしっかり閉まらなくなり、隙間ができたため血液の流れが逆流していることを示唆しています。
三尖弁逆流のため右心房、右心室の拡張が認められます。
この症例は僧帽弁閉鎖不全症を併発いるため、左心房と左心室の拡大も顕著です。
診断・治療
僧帽弁閉鎖不全症や肺高血圧症によって二次的にが起きている場合は、そちらを改善する治療を行います。単独で軽度の逆流であれば定期的な検査による経過観察をおこないます。内服でのコントロールをしていても腹水や胸水が溜まる場合は、針を刺して腹水や胸水を抜く処置を行うことがあります。